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当科の癌(胃癌、大腸癌、膵癌、胆道癌)化学療法について

当科における癌に対する化学療法について、各癌ごとに解説いたします。

胃癌の化学療法と成績

 現在、ガイドラインで推奨されている1次治療はS-1 CDDP(ティーエスワン+シスプラチン)療法とされており、当科でも原則1次治療としてS-1 CDDPを行っています。しかし、CDDP(シスプラチン)使用の際には大量の点滴を必要とし、全身状態よりCDDPを投与できない患者さんにはS-1(ティーエスワン)単独療法を1次治療としています。また、胃癌の約20%にHER2という蛋白質が発現(HER2陽性胃癌)し、HER2陽性胃癌にはトラスツズマブという抗癌剤を併用することの有効性が最近明らかとなりました。そのため、HER2陽性胃癌の患者さんには、S-1 CDDP トラスツズマブを1次治療としています。2014年9月に胃癌に対しオキサリプラチンという抗癌剤が保険適応になりました。国内の臨床試験で、S-1とオキサリプラチンを併用する化学療法(G-SOX療法)の生存期間中央値は16.5ヶ月と良好な成績が報告されています。S-1 CDDP療法は大量の点滴を行うため基本数日の入院が必要ですが、G-SOX療法は安定していれば外来での治療も可能というメリットもあります。当科でも2015年よりG-SOX療法を導入する予定です。2次治療、3次治療は、現在ガイドラインで推奨された化学療法はありませんが、タキサン系と呼ばれる抗癌剤(ドセタキシル、パクリタキセル、アブラキサン)、または、イリノテカンで治療を行っています。現段階では化学療法での治癒は難しいとされていますが、化学療法が著効した場合は手術可能となることがあります。
 2008年に報告された国内の専門施設で行われた75歳未満、全身状態良好(performance status(PS) 0-2)の患者さんを対象とした臨床試験では、S-1 CDDP療法の成績は、奏効率(癌の縮小する確率)54%、生存期間中央値13.0ヶ月とされています。当科でS-1 CDDP療法を行った全患者さん26名(34~78歳、PS0~3)の生存期間中央値は12.8ヶ月、75歳未満、PS0~2の患者さん(20名)の生存期間中央値は13.7ヶ月と専門施設と同等の成績でした。

最近5年間の新規胃癌化学療法の件数(1次治療)
  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
S-1 単独 1 1 2 4 0
S-1 CDDP 4 6 2 4 4
S-1 CDDP トラスツズマブ 0 0 0 0 1

大腸癌の化学療法と成績

 大腸癌はかつては抗癌剤の効きにくい癌とされていましたが、最近の化学療法の進歩により、現在では抗癌剤の有効な癌とされています。手術で切除のできない進行大腸癌は、化学療法を行わない場合、生存期間中央値は8ヶ月程度と報告されていますが、現在、化学療法により生存期間中央値は約2年まで延長しています。化学療法での治癒は難しい状態ですが、化学療法の著効した場合には、手術で切除可能となることも期待できるようになりました。
 大腸癌の1次治療、2次治療は、主にフルオロウラシル類の抗癌剤とオキサリプラチンの併用療法、または、フルオロウラシル類とイリノテカンの併用療法が行われます。フルオロウラシル類の抗癌剤には、5FU、ティーエスワン、カペシタビンなどがあり、5Fとオキサリプラチンの併用療法をFOLFOX療法、ティーエスワンとオキサリプラチンの併用療法をSOX療法、カペシタビンとオキサリプラチンの併用療法をXELOX療法と呼んでいます。FOLFOX、SOX、XELOXの効果は同程度と考えられています。また、5FUとイリノテカンの併用療法をFOLFIRI療法、ティーエスワンとイリノテカンの併用療法をIRIS療法と呼んでいます。FOLFIRIとIRISの効果も同程度と考えられています。FOLFOXとFOLFIRIは、5FUを2日間持続で点滴する必要があり、ポートと呼ばれる点滴用の装置を皮下に埋め込む必要があります。SOX、XELOX、IRISでは長時間の持続点滴が必要なく、通常はポートは必要ありません。その他、ベバシズマブやセツキシマブ、パニツムマブとうい分子標的薬も使用されています。ベバシズマブは単独では効果はありませんが、FOLFOX、FOLFIRI、SOX、IRIS、XELOX療法との併用で生存期間の延長が報告されています。しかし、ベバシズマブには、血栓症、傷の治りを遅くするなどの副作用があり、血栓症や脳病変ある患者さんや手術後間もない患者さんには使用できないことがあり注意が必要です。セツキシマブ、パニツムマブは、癌細胞にあるEGFRという蛋白質を標的とした薬剤で、癌細胞内のKRASという遺伝子が通常型(野生型)の場合に効果を発揮します。しかし、癌細胞によってはKRAS遺伝子が変化している(変異)場合があり、その際は効果は認められません。セツキシマブやパニツムマブは、3次治療として単独またはイリノテカンと併用で使用されたり、1次、2次治療でFOLFOXやFOLFIRIと併用で使用されたりしています。どのタイミングでセツキシマブやパニツムマブを使用するのが最も有効かは分かっていませんでしたが、最近、KRAS野生型の場合は、1次治療での併用が有効との報告がでてきています。

当科の化学療法

 1次治療としてmFOLFOX6またはSOX(+アバスチン)、2次治療としてFOLFIRIまたはIRIS(+アバスチン)を行います。3次治療は、大腸癌にEGFR変異がある場合はスチバーガやロンサーフ、EGFR野生型の場合はセツキシマブかパニツムマブ単独またはイリノテカン併用で行い、4次治療としてスチバーガやロンサーフを行っていました。しかし、最近、KRAS野生型の場合は、パニツムマブは1次治療での併用が有効との報告があり、2015年よりKRAS野生型の場合は、mFOLFOX6 パニツムマブを1次治療としています。当科では上記の方針としておりますが、患者さんの状態やご希望、副作用の具合により変更する場合があります。2008年以降当科で1次治療としてFOLFOX、XELOX、またはSOX(+分子標的薬)で治療を行った切除不能大腸癌37名の検討では、生存期間中央値は36.0ヶ月でした。

最近5年間の新規切除不能大腸癌化学療法の件数(1次治療)
  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
mFOLFOX( 分子標的薬) 4 6 7 1 3
SOX( 分子標的薬) 0 0 0 0 9
XELOX( 分子標的薬) 0 0 3 3 0
カペシタビン単独 0 1 0 0 0
イリノテカン単独 0 1 0 0 0

膵癌の化学療法と成績

 切除不能の膵癌に対しては、ゲムシタビン、またはティーエスワンを、1次治療、2次治療として行っています。当科のゲムシタビンで治療を行った24名の検討では生存期間中央値は10.6ヶ月、ティーエスワンで治療を行った11名の検討では生存期間中央値は5.7ヶ月でした。最近、膵癌に対し、FOLFIRINOX療法(5FU+ロイコボリン+オキサリプラチン+イリノテカン)やゲムシタビン+アブラキサン療法が保険収載されました。これらの治療は従来の治療に比べ副作用の頻度は増えますが、生存期間の延長が報告されています。当科でも、病気の進行度、全身状態などより適応のある患者さんには、FOLFIRINOX療法やゲムシタビン+アブラキサン療法を行っていく予定です。

最近5年間の新規切除不能膵癌化学療法の件数(1次治療)
  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
ゲムシタビン 4 5 6 1 2
ティーエスワン 1 4 1 4 1

胆道癌の化学療法

 現在、切除不能胆道癌に対してゲムシタビン+シスプラチン療法が標準治療とされており、当科でもゲムシタビン+シスプラチン療法を第一選択としています。全身状態よりゲムシタビン+シスプラチン療法が行えない場合は、ゲムシタビン単独療法やティーエスワン単独療法を行う場合もあります。

最近5年間の新規胆道癌化学療法の件数(1次治療)
  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
ゲムシタビン 1 1 1 0 0
ティーエスワン 0 5 1 1 1
ゲムシタビン+シスプラチン 0 0 1 2 4
受付時間 830分~1100
休診日 土曜日、日曜日、祝日、年末年始
夜間・休日の救急診療を行っています。