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難治性腹水に対するCARTについて

CARTとは

CARTとは、Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy: 腹水濾過濃縮再静注法の略で、肝硬変や癌などによって貯まった腹水を濾過濃縮して、癌細胞や細菌を除去し、アルブミンなどの有用なタンパク成分を回収する治療法です。

CARTの長所

肝硬変が進行すると、腹水が貯留するようになります。肝硬変に伴う腹水貯留のメカニズムの詳細は不明な点もありますが、血液中の蛋白質であるアルブミンの低下が関係していると言われています。アルブミンは肝臓で合成されるため、肝硬変で肝臓の機能が衰えると満足にアルブミンが生成できなくなり、結果として血液中のアルブミン濃度が低下します。これにより血液の浸透圧が低くなり、血液中の水分が血管外へと漏れ出してしまうのです。腹腔内へ水分が漏出すると腹水として表れるようになります。他には、胸水や手足の浮腫みとしても表れます。腹水中にもアルブミンは含まれており、腹水を繰り返し抜くことにより腹水中のアルブミンを失ってしまい、結果として血液中のアルブミンまで低下してしまいます。これを防ぐために、アルブミン製剤を点滴により補充する方法もありますが、アルブミン製剤は人の血液から精製されるので、ウイルスの感染やアレルギー症状などが問題となることがあります。CARTでは、自分自身の腹水に含まれるアルブミンを濃縮し再び自分の体内に戻すので、腹水を抜くことによるアルブミンの喪失を防げます。さらに、自分自身のものであるので、ウイルス感染やアレルギー症状を起こす可能性も極めて低くなります。

対象となる方

肝硬変に伴う腹水を生じている方で、利尿薬によるコントロールが困難な方。その他にも、癌により腹水を生じている方も適応となります。

具体的な方法

①超音波で腹水が貯留している場所を探し、腸管などを誤って穿刺しないような安全な場所から穿刺を行います。
②通常は、排出された腹水はそのまま破棄されますが、CARTの場合は貯留バッグに腹水を貯めていきます。

③回収した腹水は、人工透析の機械にかけられ、有害物質(細菌や癌細胞)を濾過して取り除き、濃縮して水分も取り除いていきます。

④その後、濾過・濃縮された腹水を再び点滴によって体内に戻していきます。

[旭化成クラレメディカル(株)より資料提供]

上の写真は当科で実際に行われている様子です。

成績

当科では、2009年4月から2014 年8月までに肝硬変による腹水を持ち、利尿薬でのコントロールが困難であった29人の方に対してCARTを行いました(男21人・女8人、平均年齢69歳)。そのうち12人の方は、腹水がなくなる、もしくは最終的に利尿剤内服のみでコントロール可能となりました。残りの17人うち、7人の方はCARTを行う間隔を2週間以上に延長させることができ、症状の軽減が図れております。残念ながら残りの方はさらに頻回に行う必要のある方々で、肝硬変に伴う難治性の腹水の方全てに効果があるわけではありません。その場合は他の治療法も検討しながら診療にあたっております。

合併症・禁忌について

よくある合併症としては、濃縮した腹水を体内に戻した後に発熱することがありますが、大抵の場合は一時的なものであることがほとんどです。 腹水中に感染をおこしている場合(特発性細菌性腹膜炎と言います)は、腹水中に細菌が多く混在しているので、この場合は禁忌となります。また、癌による腹水の場合は、腹水中に癌細胞が多く存在するため、濾過する際にフィルターの目詰まりを起こす場合があり、注意が必要です。

CARTによる治療をご希望の方へ

当科では、多くの方に対して安全に行ってきた実績があります。利尿薬を内服しているのに腹水が溜まってきてしまい、それによって腹部膨満感などの症状が出てお困りの方は、一度当科外来を受診していただいたきご相談下さい。

症例 CARTにて復水が消失した例

施工前

大量の腹水(矢印の濃い灰色の部分)

施行後腹水消失しています

受付時間 830分~1100
休診日 土曜日、日曜日、祝日、年末年始
夜間・休日の救急診療を行っています。