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診療科・部門

医療安全推進室


室長より

医療安全推進室の室長を務めております後藤です。当院の医療安全を推進する目的で設置されましたが、一口に医療安全と言いましても幅広い領域を対象としています。その中で私が力を入れておりますのは、以下の3点です。
  1. 単純なエラーの防止
    いわゆる単純ミスと言われるものですが、場合によっては大きな事故につながります。多くは間違いやすい原因が隠れていますので、早めに危険を察知して予防に力を入れたいと思います。

  2. 診療レベルの向上
    診療が未熟だと、当然ですが患者さんに大きな不利益を与えてしまいます。院全体で診療のレベルアップに努めていきたいと思います。

  3. コミュニケーション不足による紛争予防
    医療は不確実な領域が多くあり、エラーもなく、診療レベルも未熟でない場合でも結果が不満足に終わる場合が多々あります。このような場合、きちんと患者さん・ご家族に説明していれば納得が得られますが、不十分だと紛争に発展してしまいます。結果が悪い場合ほどきちんと説明することを基本としていきます。
以上を中心として、患者さん、ご家族の皆さんが安心して診療を受けていただける病院にしていきたいと考えております。またお願いですが、全ての皆様に安心して療養していただけるように院内の規則を守っていただくことと、医療はいまだ不確実な領域が多く、予期せぬことが起こり得るということをご理解いただきたいと思います。
高度化・専門化された複雑な医療の現場において、安全な医療を提供するためには、病院全体でエラーが発生しにくい仕組み作りをすることが必要です。当院では医療安全推進室が設置されており、室長(副院長)を中心とした9名のメンバーで、安全管理のための活動を行っています。

医療安全管理における組織図

主な活動内容

1)インシデント・アクシデント報告の分析、改善対策の検討

各部署において発生したインシデント・アクシデントはレポートとして医療安全推進室へ即時報告されます。医療安全推進室では毎週1回のミーティングで、報告されたケースについて検討し、再発防止対策を考えます。
また、一か月分のデータ集計結果は、医療安全管理対策委員会において各部署のリスクマネージャー間で共有し、さらに討議を行い安全管理体制の強化につなげます。

2)院内ラウンドの実施

インシデント・アクシデントレポートで報告された内容については、院内ラウンドを行い、その実態を把握しています。また、医師・薬剤師・臨床工学技士などとともに、医薬品・医療機器の管理の現状を把握するよう努めています。

3) 部門リスクマネージャーの活動

各部門のリスクマネージャーは緊急対応・医療機器管理・薬剤管理・転倒転落防止・チューブ抜去防止のグループに分かれて、院内教育やマニュアルの整備など、課題達成に向けて取り組んでいます。

4) 医療安全に関する職員への啓発・広報

他施設で発生した医療事故事例等を職員へ周知し、当院での事故発生を防止することに努めています。また、インシデントレポートで報告された内容を他部署で共有できるようにタイムリーに情報を伝えて、同様のインシデント発生を防止できるよう対処しています。

5) 感染対策

感染管理医師と感染管理看護師が、医療安全推進室メンバーとして院内の感染管理状況をタイムリーに把握し、厳重な感染管理対策に努めています。
主な活動
  1. 院内サーベイランス
  2. 感染管理対策チームによる院内ラウンド
  3. 研修会などの教育企画
  4. マニュアルの整備

医療安全に関する最近の具体的な取り組み

医療は不確実さが伴うものでありどんな医療行為においても絶対事故をなくすということは不可能です。人間はミスをするものであるという考え方は今では医療に限らず多くの分野で認識されています。さらにもともと不安定な状態である患者さんに対しての医療行為には正しい診療を行っても時に思わしくない結果が生じることもあります。すなわち医療事故(過失の有無に関わらず)をゼロにすることはできません。しかしその確率を限りなく少なくすること、さらに過失や思わしくない結果が生じたときも被害を最小限にとどめることは、病院が様々な対策をとり実践し、また職員一人ひとりが安全に対する意識を高めていけば可能と考えます。
かつての医療は、個々の医師をはじめとする医療者が自分中心に行い、周囲はそれにあわせていくやり方で行われていました。これでは様々なやり方が院内で混在するため事故の危険は高いものとなります。そこで現在の考え方は病院全体で医療の標準化を行い統一した方法で医療を行っていくということになっています。これであればどの医療者も統一した方法で医療を行うため事故の危険は低下することは明らかです。そのため当院でも病院全体で様々な取り組みを行っております。そのいくつかをご紹介いたします。

1)鎮静剤処方医に対する研修の必修化

医師が薬を処方することはその裁量の範囲内であり医師免許があればどの薬でも用法用量に準拠していれば処方することは可能で鎮静剤も例外ではありません。鎮静剤は検査処置の際に患者さんの苦痛を軽減するために大変有用な薬剤ですが、呼吸抑制等で重大な副作用が生じる危険度の高い薬剤であり正しい知識のないままに使用すると患者さんに重大な不利益、場合によっては死亡事故にも繋がります。そこで2016年より鎮静剤を処方する医師は講習の受講を2年に1回義務付けました。この研修は麻酔科医師および薬剤師から薬の作用や合併症、さらに使用時の注意事項等を講義してもらうものです。受講できない医師は資料を基にセルフトレーニング問題の解答で合格ラインを超えないと処方不可としています。当院の医師で鎮静剤使用する可能性のある医師はすべて皆この基準に則って認定されています。

2)中心静脈カテーテル挿入術(CVC)認定報告制度

CVCは心臓のそばの大静脈という太い血管にカテーテルを挿入して点滴を行うことにより薬剤や栄養を注入する行為で、様々な病態で行われます。多くの診療科で行われますが、やり方が医師によって(すなわち習った病院)様々であり、さらに合併症も多く時に致命的な事故が生じる手技とされています。しかし多くの施設で対策は不十分でした。当院でも合併症が生じることが散見されたため、安全に実施されるために認定報告制度を2018年9月に制定運用しました。
制度の概要は、安全なCVCのためには
  1. 適応の厳格化
  2. 安全な穿刺手技等の標準化
  3. 安全手技の教育体制の構築
が推奨されており、また危険な手技の実態を病院全体で把握し合併症の分析を行い更なる事故の予防に努めることが求められています。そのため実施したCVCをすべて院に報告する制度および、施行医の知識技術をきちんと評価し認定することを骨子としています。これにより施行する医師は施行可能医(単独での施行は不可で認定以上の指導の下に行う)、認定医(単独での施行可)、インストラクター(本制度の運営に関与しまた教育をつかさどる)の3段階に分けて認定しました。それぞれ基準があり特に施行可能医になるには筆記試験を課しています。また報告制度は施行後すみやかに規定の報告書に記載して提出することが義務付けられており提出されない場合は認定取り消しとなっています。この制度により以下が達成されることを目標としています。
  • 安易な施行と多数回(4回以上)の穿刺の回避
  • 手技・教育体制の標準化
  • マニュアル・報告制度の順守による安全文化の醸成
認定者は、下記のように認定証を携帯しています(左から、インストラクター、認定医、施行可能医)

※顔写真はすべてイメージです

3)DNARガイドラインの制定

人生の最終段階を迎えた患者及び家族に対して、どこまで診療行為を行うかは医師をはじめとする医療従事者にとって重大な問題であり、基本は患者、家族の意思が尊重されるべきです。しかし専門的知識のない患者・家族に対しどのような説明を行うかは医師の裁量に依存していたのが現状でした。その結果医療者‐患者間や医療者間にさまざまな葛藤が生じる場合もあり、時に紛争に発展することも見受けられます。そこで、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation:心肺停止時に心肺蘇生を実施しないこと)の指示のあり方をはじめ終末期の医療行為について言及しているガイドラインを作成し書面で患者さんおよびご家族から合意を得ることを基本としました。基本となることはその患者さんが終末期であるかどうかを主治医個人での判断ではなく複数の医師を含むチームで判断すること、状況に応じて適時合意を見直すこと、合意が得られない場合やチーム内で意見が分かれるときは病院として協議機関(臨床倫理小委員会)で話し合うこと、などが定められています。

4)M&Mカンファランスの実施

はじめに述べましたように医療は明らかな間違いがなくても患者さんにとって不満足な結果となることは珍しくありません。そのもっとも残念な場合が、患者さんがお亡くなりになることです。そこでこのような症例について病院全体で議論し、どうすればもっと違う結果にならなかったのか(すなわち救命できたか)を検討することは大変有用と考えられています。このような検討会を死亡・合併症カンファランス(M&M(mortality & morbidity)カンファレンス)といい医療安全の分野でも推奨されているもので、また研修教育の観点からも推進すべきものと考えられており病院全体の取り組みとして2017年5月から2ヶ月に1回ずつ検討を行っています。関係診療科の医師が中心ですが関係病棟スタッフや薬剤師、リハビリスタッフ、栄養課なども参加し活発な議論が交わされています。昨年末で計10回開催されました

5)外部講師を招いた講演会

医療安全の研修には外部の講師の先生のお話も有用と考えており毎年冬に講演を依頼して開催しています。一昨年は中京大学法科大学院教授の稲葉一人先生に医療に関する法と倫理についてのお話であり、昨年は厚生中央病院院長補佐である荒神裕之先生に医療におけるコンフリクトマネジメントについてのお話を伺いました。今年度は転倒予防に関する講師の方をお招きの予定です。

6)画像診断レポートの確認の徹底

画像診断レポートの確認忘れは全国的問題となっております。当院でも夜間休日に施行したCTにたいする読影レポート(翌平日に放射線専門医によって作成される)を十分確認しない事例が発生しており、対策が検討されました。そこで「当直医師に対して翌日の午前中に確認を促すメールを送って注意喚起する」という対策を行い、さらに「当直帯に限らず全ての画像診断レポートについて医療事務者が確認し悪性腫瘍等の疑いで精査が勧められているレポートを抽出して担当医に適切な対応がとられているか問い合わせる」システムとしました。その結果後日受診を促す連絡をさせていただく場合もあり見落とし対策に有用と考えています。
以上最近になってようやく形になってきたことを紹介しました。当院もいろいろな事例を経験することによって少しずつ安全への取り組みが確立してきているように感じます。しかし大切なことは事故が起こってから対策を立てるのではなく、事故が起こる前に対策を立てることだと考えます。職員一人ひとりが安全に対する意識をもって日々行動することが大切であり医療安全文化の醸成、すなわち「安全を最優先に意思決定できる人たちの心が、組織の中で自然に受け継がれていくようなこと」が何よりも大切と考えています。

患者さんへのお願い

ご入院中、安全にお過ごしいただくためには、患者さん・ご家族さまにいくつかのお願いをしております。

患者さんを確実に確認するために・・・

患者さんご本人かどうかの確認のために、お名前をフルネームで名乗っていただいております。また、ご入院の際にはお名前の書かれたバンドを手首につけていただいております。薬剤を使用するときや検査を行うときなど、確実に患者さんを確認するためですので、ご協力いただけますようお願いいたします。

転倒・転落防止を防止するために・・・

ご病気による体力の低下などにより、入院生活では転倒やベッドからの転落などの危険性が高くなります。履物はかかとがしっかり固定され、普段履きなれた履物をお持ちください。ご心配な時には、必ず看護師が付き添いますので、ご遠慮なさらずにナースコールでお知らせください。

その他、安全な入院生活を送るために・・・

  1. 病気の治療目的で、食事の制限や水分制限をさせていただく場合がございます。 差し入れや、患者さん同士での食べ物のやり取りはしないように、ご協力ください。
  2. 「入院のご案内」に記載されているもの以外の、入院時のお持ち込みはお断りして おりますが、何かございましたら病棟看護師長にご相談ください。
  3. 薬剤や食品のアレルギーがある場合には職員へお伝えください。
  4. 他の患者さんや職員に対する暴力や暴言等の迷惑行為は禁止致します。 場合によっては退院していただくことがあります。安全な入院生活のためにご協力いただけますよう、お願い致します。
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